あっという間に、暑かった夏が過ぎていきます。
早くも秋雨前線。
そして、台風から変わった熱帯低気圧の影響による大雨。
なんだか地球が荒れていますね。
フランスでも今年は酷暑と干ばつが続き、
ワイン用のブドウにもかなり大きな被害が出ているそうです。
今年のフランスワインの生産量は、
過去30年でもかなり少ない水準になるとか。
そういえばワインって、
「ブドウがあまり採れなかった年は、逆に当たり年になる」
みたいな話をどこかで聞いた気もするのですが。
調べてみると、そんなに単純な話でもないらしい。
暑すぎてもダメ。
雨が多すぎてもダメ。
少なすぎてもダメ。
人間と一緒ですね。
あまり知らないことを、
知ったように言うものではありません。
さて。
「異常気象」と言われるようになって、もう何年でしょう。
原材料が上がった。
輸送費が上がった。
人件費が上がった。
電気代が上がった。
円安になった。
不作だった。
理由は毎回違いますが、
結局のところ、その先に待っているのは、
値上げ。
僕たち商売をする側も、
上がったものを永遠に自分たちだけで吸収することはできません。
だから値上げをする。
すると今度は、
お客様の生活が苦しくなる。
その繰り返しです。
来年からは、
飲食料品の消費税を1%にするという話も進んでいます。
8%が1%になる。
数字だけ見れば7%分、負担が軽くなる。
それならいい。
本当にその7%分が、
そのまま消費者であるお客様の生活を少し楽にしてくれるのであれば、
とてもいい政策だと思います。
ただ。
どうせ原材料が上がった。
物流費が上がった。
人件費が上がった。
そんな理由が重なって、
いつの間にかその7%分くらい価格が上がってしまうのではないか。
結局、お客様にはほとんど恩恵が残らないのではないか。
そんなことも考えてしまいます。
もちろん、
企業に少し余裕が生まれて、
それがお給料を上げる原資になるのであれば意味はあります。
でも、それも今のところ2年間の限定措置。
その先はどうするのでしょう。
最近、
この国の少し先を考えたときに、
なかなか明るい未来を想像できないことがあります。
円安になれば、
海外から入ってくるものは当然高くなる。
チョコレートも。
バターも。
ナッツも。
包材も。
機械も。
僕らの仕事は、
世界経済なんていう大げさなものとは無縁に見えて、
実はものすごく影響を受けています。
円の価値が下がれば、
日本にいる僕たちから見れば世界中のものが高くなる。
だったら資産を守るために円を売ってドルを買う。
個人として考えれば、
それは合理的なのかもしれません。
そして実際、
そちらの方が儲かる場面もあるのでしょう。
でも、みんながそれをやれば、
さらに円は弱くなる。
自分を守るための合理的な行動が、
巡り巡って自分たちの住む国を弱くしてしまう。
なんとも皮肉な話です。
「自分だけ得をすればいい」
それが社会全体の正解になってしまったら、
たぶん国は少しずつ壊れていくのだと思います。
そういえば、
僕ら氷河期世代が若かった頃にも、
「国際競争力」
という言葉をよく聞きました。
人件費を抑えて、
企業の国際競争力を上げる。
非正規雇用が増え、
正社員になることさえ難しかった時代。
そして当然、
結婚できない。
子どもを持てない。
そんな人たちも増えました。
その結果として少子化が進み、
さすがにこれはまずいとなった頃には、
今度は若い世代の給与を上げようという話になる。
働き方改革も始まる。
もちろん、
若い人のお給料が上がるのは良いことです。
働く環境が改善されるのも良いこと。
それ自体に文句があるわけではありません。
ただ、
僕らの世代は一体何だったんだろう。
と思うことはあります。
上の世代には、
「若いんだから働け」
「変わりはいくらでもいる」
「自己責任」
とどこに行っても言われつづけ、
若い頃には低賃金さらに、超長時間労働。
ようやく中堅になったと思ったら、
「これからは若者を大切にしよう」。
おお。
ちょっと待ってくれ。
俺たちは奴隷か?
何もおいしいところがなかったなあ。
そう思うことがあります。
だから20代の頃、
僕は腹を決めました。
誰かが何とかしてくれるのを待つのはやめよう。
自分の人生は
自分で切り開こう。
そう思って始めたのが、
今につながっています。
それはそれは紆余曲折。
沢山いろいろありました。
許せないことも不義理なことも、
理不尽なことも。
だからこそ最近、
世代同士で喧嘩をしている場合なのかな、
とも思うのです。
上の世代が悪い。
氷河期は使えない。
若者が悪い。
政治家が悪い。
会社が悪い。
店員が悪い。
客が悪い。
SNSを開けば、
毎日のように誰かが誰かを叩いています。
口コミサイトでは、
知らない人同士が評価し合う。
お店では、
店員に怒りをぶつける人もいる。
店員側がお客様をカスタマーハラスメントという言葉で敵のように見ることもある。
会社ではハラスメントという言葉が飛び交う。
そして世界を見渡せば、
80歳になったドナルドが、
いまだアメリカ合衆国大統領として世界を動かしている。
ねえ。
なんかおかしくない?
この世界。
気象だけじゃなく、
人間の方もずいぶん荒れている気がします。
戦争を実際に経験した人たちが、
この国から少しずついなくなっていきます。
何があって今の日本があるのか。
誰がどんな時代を生きて、
何を失って、
何を残してくれたのか。
右とか左とか、
そんな話ではなくて。
もう少し、
自分たちが生きている国のことを知って、
何が本当に大切なのかを考える教育があってもいい。
僕はそう思います。
とりあえず、愛知県民は三ヶ根山の慰霊碑を訪れるべきかと。
自分だけが得をすればいい。
自分の世代だけ良ければいい。
自分の会社だけ儲かればいい。
そんなことをみんなが考え始めたら、
最後には誰も幸せにならないでしょう。
とはいえ。
僕は政治家でもなければ、
経済学者でもありません。
ただのパティシエです。
そして。
気づけば、もう9月。
……。
あぁ。
クリスマスケーキ。
現実(笑)
実は一つ、
試作がかなりうまくいきました。
まだ、
「もうちょっとこうしたいな」
というところはあります。
でも、
これはきっとお客様に喜んでいただける。
そんなところまで来ています。
世界がどうとか。
日本がどうとか。
政治がどうとか。
そんな大きなことを僕が変えることはできません。
それは僕の仕事ではありません。
偉い人たち。
せっかく手にした権力です。
ぜひ、
自分のためだけではなく、
真面目に生きる国民のために平等に使ってください。
きっとそれだけでも、
世の中は少し良くなると思います。
そして僕は僕で、
自分にできることをやります。
10年後に、
「あの時、あんなものを売らなければよかった」
と後悔するようなお菓子ではなく、
10年後でも、
「あの時、これを作って良かった」
と思えるお菓子を作る。
安いから売れる。
流行っているから売れる。
儲かるから作る。
もちろん商売ですから、
それも大切です。
でも、それだけに支配されたくはありません。
僕はパティシエです。
ちゃんと作ったものを、
ちゃんとお客様に届けたい。
秋のケーキをたくさん作ります。
栗。
ぶどう。
いちじく。
そして、これから少しずつ冬のお菓子へ。
お客様に、
「おいしかった」
と言っていただけるものを。
僕が生まれたこの町、
安城市を。
そして愛知県を。
自分なりの形で、
誇りに思える仕事をしていきたい。
大げさなことはできません。
国を変えることもできません。
でも、
目の前のお客様を少し幸せにすることくらいなら、
僕にもできるかもしれません。
そんなお菓子と愛知県を誇りに思うギフトを作りながら、
この町で生まれた一人として、
これまで育ててもらった恩返しを、
少しずつお菓子を通してしていけたら。
それだけで僕はおなかいっぱいです。






