2022.10.07

訃報の中で掘り起こした大切なもの。

先日偉大なフランス人パティシエがなくなったと友人からの連絡があり、
フランスのニュースで確認しました。

僕がフランス滞在中にみたパティスリーの中でも
トップレベルにいいお店だと思ったお店のシェフでした。

お名前をお出しするのもおこがましいので伏せますが、
MOFの称号も持ち、おそらくフランス人のパティシエで知らない人はいないというくらい有名なシェフだと思います。
日本でも、サロンドショコラに出店されたこともあったと記憶していますが、
やはり、直接フランスの地方都市のお店に行きたいと思って、
買ったりはしませんでした。

今、お店にあるケーキの中で影響を受けて作っているもので、
モガドールや、構成は大きく違うけれど春に出しているマカロナードプランタンなんかが
僕にとってそのお店でおいしいと思ってお出ししているケーキに反映されています。

それは若き日のころ20代も終わりのころ。
僕はアルザスのマンステールという小さな町の
パティスリーギルグでバカンスドゥトラバイエで働いていたころです。

丁度、アルパジョンのコンクールの準備をしていたころだったと記憶しています。

とても面倒見の良い、ギルグのシェフに今度○○に一泊で行って
そのお店でケーキ食べてこようと思っています。と。

へぇー。友達だから連絡しておいてあげるよと。
軽くおっしゃっていただき、まさかのダイレクトにお電話してくださり、
当日を迎えました。

本店はちょっと田舎にあったのですが、
地方のTGV(新幹線)の駅あるような大きな都市に支店があり、
そこからローカルな電車でいける本店に行くことになっていました。
なので、土曜日に前乗りしてその地方都市に泊まり、翌日に備えました。

その前日にお邪魔した支店がものすごくかっこよく、
今でもあこがれてしまうお店。
当時もう、15年ほど前の時代のホームページも
他のお菓子屋さんにはないような素敵なデザインで、
明らかにフランス国内のパティスリーとも一線を画していました。

お客さんどころか町に人もいない日曜日の朝。

その本店もお客様は少なかったのですが。
小さな本店にはその有名なシェフが待ち構えていました。

とても、サンパな感じでお話してくださり、厨房を見学させていただいたり、
ケーキを5個もいただき、一つ一つ思いを教えてくれたりして
そのたびにコーヒーをお代わりをくれるという今でいう、神対応。

友人のお店で働いているパティシエとはいえ、
面識のないフランスでは外人の日本人。
そんな僕のような人に何をしても見返りもないにも関わらずとても親切に
ご対応してくださったのを覚えています。

さらに、帰りにはタクシーで来た道を車で送っていただくという。
もう、今となっては宝くじに当たったような
夢の時間を過ごさせていただきました。

その際に、お話してくださった影響は
僕が育った町安城でお店をすることも含まれます。

店内でもいろんなところで影響を受けているものがあります。

一つはプライスカード。
初期のしあわせのえきのプライスカードは
どうしてこのお菓子を作ったか?そんなことを中心に自分がこのケーキに込めているものをお客様にお伝えすることにしていました。

そう、そのシェフが僕にいろいろとお話してくださったように。
かといって自分が店頭に立つ機会はほとんどないので。

あまりにもお客様からそんなのいらないから中身の構成をわかるようにしなさいと
お叱りを受けたので今では少し控え気味にしていますけど、いまでも
納得いってなかったりします。なので、時々あふれちゃうのはブログで吐き出します。

それと。
写真撮影禁止。
これは実はその方からの受け売りです。
一度もご来店されていないお客様が、
ご来店くださったときに楽しくなくなっちゃうという事。

確かに!!とものすごい納得をしたのを今でも覚えています。

時代に流されて一時人の顔が映らなければいいですよと
撮影オッケーにしたりしたのですが、
恐らく同業者の方でしょうね。
思いっきりスタッフの顔を入れた写真をネット上にアップされることがありました。
それを見つけた瞬間に、店内撮影許可は終了しました。

店員は人ではないのか?
いやだめだろう。
いいわけないだろう。

そんなことも知らない人がたーくさんいるのでまだまだ撮影OKにはできません。
調べてみると肖像権問題とかもっと面倒なことになる可能性あるそうで。
もう、そういう事には巻き込まれたくないのです。

もちろんご購入されたものに関してはご遠慮なくどうぞ。
ただし、壊れたメロンのケーキとかやめてくださいね。

作った人に対しての侮辱です。
そんな自覚は当然ないからそうなんだろうけど。

勝手にホームページの写真を使ってのツイートや口コミもやめましょう。
これは著作権の問題があるそうです。

話は戻って、
なくなった有名なシェフ。

年齢は53歳。
まだまだお若かったのに。

僕が今43歳。
もちろん明日あの世へ行ってしまう可能性はゼロではないけれども、
それでも53歳は若すぎる。

近いうちにそんな彼が作ったようなケーキを
僕は自分のオリジナルな構成でお出ししようと思っています。

ただ、長くは続けないと思っています。
ゆめのかいちごが始まってからですね。

今思えば、この方以外でもいろんなところで影響を受けたことが
しあわせのえきにはたくさんあります。

今回の訃報でいろいろと思いだしたりできるきっかけともなりました。

大切にしていなければいけないことをちょっと忘れていたように思います。

僕が安城でお店をやると決めた時。
フランスでは地方でも輝けるお店がたくさんあった。
そんなお店になれるように初心に戻ってその輝きをめざしたいとちょっと思っています。

10年やったからもういいでしょ。
という半ば開き直りともいえる状態で、
この先このお店を進めていきたいと改めて思いました。

いろんな人のアドバイスを聞いていろいろと遠慮をしていました。
でも、この地域の方々にとって必要なお店となれるように必要なことと思い、
自分を一生懸命抑えていました。

本当に自分がやりたいようなことはちょっとずつ入れ込んでいますが、
半分もありません。

でも、アドバイスをまともに聞いていたので10年は営業を続けられました。

そう思うと、今までご来店してくださったお客様を裏切るのか?
いえ、違います。

今こそ僕が自分が持っているものをできるだけ発揮していかなければいけない。
もういいでしょ。
そろそろ本当の意味で好きにやっても。

値段が高いとか知りません。
決してぼったくりなわけではないですから。

もちろん、お客様に評価をされているものを一気に変更する気もありません。

あくまで少しずつ。
お客様の顔色をみておつくりする商品、そうでない商品と
大きな差が出たとしても、できるだけ選んでみてください。

とはいえ、まだ数は多くはありません。

そのうち近いうちに。

それがいつになるかは分かりませんが。
とりあえず、コロナウィルスの影響が収まってからですね。

今はまだすべきじゃない。
それはよく理解しています。

フランスのコンクールとか何にも知ったこっちゃない人がたくさんいる土地で
自分が見てきてやってきたことが評価されることの方が、
僕の人生にとってきっと価値があり、自分が楽しいと思うので。

そしたらきっと20年が見えてくるはず。

ずっと探してたような大切なものは自分の中にありました。

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